酸素欠乏症とは?症状や原因、対処方法についてご紹介
投稿日:2020.05.05
更新日:2022.08.23
お役立ち情報
今回は、食品工場などで注意しておきたい従業員の安全管理についてご紹介していきたいと思います。食品工場は、人が口にする製品を製造するという特性上、衛生管理面に関しては細心の注意を払っていると思います。例えば、食品を取り扱う従業員の個人衛生から始まり、直接食品に触れる機械・設備、調理器具の清掃など、細かな部分まで施設の衛生管理のためのルールが作られていることだと思います。
それでは、施設内で働く従業員の安全管理に関してはどうでしょうか?もちろん、包丁などの刃物を使う場合や大型機械の取り扱いに関する決まりなどは作られているが、従業員の『酸素欠乏症』に関する対策などは行われていない施設が多いのではないでしょうか?酸素欠乏症は、いわゆる酸欠と呼ばれる症状なのですが、工場と酸素欠乏症の関連性がイメージできず「なぜ工場で酸素欠乏症に注意が?」と疑問に思ってしまう方が多いかもしれません。
そこで今回は、酸素欠乏症のメカニズムや工場で酸素欠乏症を防ぐための対策をご紹介します。
Contents
そもそも酸素欠乏症とは?
それではまず、酸素欠乏症の基礎知識について簡単にご紹介しておきましょう。冒頭でご紹介したように、酸素欠乏症とは、いわゆる『酸欠』と呼ばれる症状のことで、閉鎖された空間などで空気中の酸素濃度が18%未満に低下してしまい、その空気を吸うことによって症状が認められる状態のことを指しています。
最近ではコロナ禍により、常時マスクを付けていることが多くなっています。マスクはウイルスや粉塵から守ってくれる効果がありますが、呼吸にとっては障害となります。
マスク着用時は自分が吐いた空気を吸うことになりますので、二酸化炭素を多く含んだ空気を取り込むことになります。
また、マスクをしていると無意識に口呼吸をしていることがあり、呼吸が浅くなってしまいます。
これらは「マスク酸欠」や「かくれ酸欠」とも言われ、症状として慢性的な片頭痛、イライラ、集中力の低下、肩こりなどがあります。
工場や倉庫でも衛生管理、汚染防止のためにマスクをして作業をすることが多いため、気付かないうちに酸欠を起こしている可能性もあるのです。
工場で酸素欠乏症の危険がある場所は?
工場などでこのような症状が出る危険がある場所は、発酵食品を製造する場所や、野菜をたくさん保管している倉庫、醤油などを醸造するタンクなどが考えられますので注意しましょう。酸素欠乏症になってしまうと、めまいや吐き気などの症状が出てしまったり、突然意識を失って倒れてしまうなど、最悪の場合は死に至ることもある非常に恐ろしい症状です。
酸素欠乏症の原因と発症のメカニズム
それでは、酸素欠乏症が起こってしまうメカニズムについてもう少し詳しくみていきましょう。
『酸欠』に関しては、よく耳にする症状のわりに、どのような仕組みで起こっているのか、どういった場所が危険なのかを理解している人は意外と少ないのではないでしょうか?しかし、上述したように、最悪の場合は死に至る症状ですので、その仕組みをきちんと理解して危機感を持っておくべきと言えるでしょう。
通常、空気中の酸素濃度は約21%程度と言われており、それ以外は窒素が約78%でその他の成分が約1%含まれていると言われています。そしてこの酸素濃度が約18%以下になった場合、その空気を吸うことで酸素欠乏症の症状が出てしまうと言われているのです。
私たちが生きていく上では、酸素は欠かせないものです。普段何も意識することはないと思いますが、私たちが吸った空気は肺に運ばれ、血液中の赤血球の働きで全身に酸素が運ばれています。酸素欠乏症が最も恐ろしいのは、普段の生活の中で何の疑いもなく吸っている空気が、突然人間にとって凶器となってしまう可能性があるということです。
ここでポイントになるのは、「気体は濃度の低い方へ流れていく性質がある」ということです。私たちの全身に酸素を届ける赤血球は、全身を巡ったあと約16%程度まで酸素濃度が低下しています。そして、約21%の酸素濃度がある通常の空気であれば自然と赤血球側に酸素が流れていくのです。
しかし、空気中の酸素濃度が低くなっていた場合を考えてみましょう。「気体は濃度の低い方へ流れていく性質がある」という特徴から、空気中の酸素濃度が低くなっていた場合、酸素濃度が高い赤血球から空気へと酸素が流れて行ってしまう訳です。例えば、空気中の酸素濃度が10%以下になってしまっていた場合、人間は動くことも叫び声をあげることもできなくなると言われており、室内で一人で作業している…という場合には、発見が遅れ最悪の事態に発展してしまう訳です。
ちなみに、酸素濃度が6%以下の空気となると、ひと呼吸しただけで体内の酸素が吸い取られてしまい、昏倒してしまうと言われています。
酸素欠乏症の症状と危険性
人間は酸素濃度18%が安全限界と言われており、この濃度を下回ると頭痛や吐き気、脱力、意識喪失などの症状が表れます。最悪の場合は死に至る危険性があります。
- 酸素濃度16%:呼吸数・脈拍数の増加、頭痛、吐き気、など
- 酸素濃度12%:めまい、筋力低下、体温上昇など
- 酸素濃度10%:顔面蒼白、チアノーゼ、意識不明
- 酸素濃度 8%:昏睡
- 酸素濃度 6%:痙攣、呼吸停止
以上のように、酸素濃度が低下すると様々な症状が表れますが、特に影響を受けるのが脳になります。
脳は臓器の中で最も酸素を消費するため、酸素の供給が不足すると、脳に障害が出る可能性が高くなります。
酸素欠乏症になった・遭遇したときの対処法
自身に頭痛や吐き気などの症状が出たときには直ちに屋外に移動するなど、酸素が十分に確保できる状態にします。
もし、誰かを救助しなければならない場面に遭遇した場合は、一刻を争う状況ではありますが、自分も巻き込まれないようにすることも忘れてはいけません。
救助に入った人が酸素が少ない空気を吸い込んでしまい、酸欠で倒れてしまうという二次災害が起こる可能性があります。
慌てて現場に飛び込むのではなく、窓や扉を開放する、換気扇や送風機を稼働させるなど換気ができる状態にしましょう。
空気呼吸器や酸素マスクがあればそれを使用して救助を行います。
上述したように、脳は人間にとって最も重要な臓器の一つであり、最も酸素を消費する臓器でもあります。
酸欠状態では脳に障害がでる可能性が高くなります。そのため蘇生措置は一刻を争う状況になります。
心肺停止から救命処置が行われるまでの時間は救命率と大きく関連しています。心配停止から1分以内に救命処置が行われれば95%が救命され、3分以内では75%、脳障害も避けられる可能性があります。
5分を経過すると救命率は25%になり、8分経過すると救命の可能性は極めて低くなります。
周囲の方にも協力を仰ぎながら、救命措置、119番通報や換気、関係者への連絡などを行いましょう。
酸素欠乏症を防ぐには?
それでは、工場や倉庫などで従業員を酸素欠乏症から守るためにはどのような対策を行っておけば良いのでしょうか?ここでは、独立行政法人労働者健康安全機構の資料から、酸素欠乏症対策を引用しておきますのでぜひ参考にしてください。
- 酸素欠乏危険作業主任者を選任し、作業主任者の職務を実施させること
- 酸素欠乏危険場所では作業開始前に酸素濃度、硫化水素濃度の測定を実施すること
- 換気をせずに、または換気が不十分な状態で、危険場所へ立ち入らないこと
- 空気呼吸器等の呼吸用保護具を準備し、教育を行い、適切に使用すること
- 転落のおそれがある場所は、酸素欠乏の発生に備え、安全帯等を使用すること
- 事故発生時に備えて、空気呼吸器等、はしご、ロープ等の他、救出をするための必要な用具を備えておくこと
- 酸素欠乏危険場所では労働者の出入りを点検すること
- 酸素欠乏危険場所では関係者以外立入禁止とし、必要な事項の表示を行うこと
- 酸素欠乏危険場所ではその近隣に必要事項を連絡しておくこと
- 異常の早期発見と適切な処置を迅速に行うため監視人を配置すること
- 労働者に対して、酸素欠乏危険作業、酸素欠乏症や硫化水素中毒に関する基礎知識とその対策、救助作業における注意、空気呼吸器等の保護具使用等の特別教育を実施すること
酸素欠乏症対策は上記を参考にしてみてください。
普段は、誰もが何も考えずに呼吸していると思うのですが、場合によっては空気が人間にとって凶器になっている場合があるということを忘れてはいけません。こういった酸欠事故は、作業主任者を選任していないことや、安全衛生教育がしっかりとなされていなかったことなどが原因と言われています。したがって、このような酸欠事故を防ぐためには、酸素欠乏症が起こるメカニズムとその恐ろしさをしっかりと教育するなど、従業員の危険予知トレーニングをおこなうことが有効だと言えるでしょう。
まとめ
今回は、工場や倉庫などで従業員の安全を守るためにおさえておきたい酸素欠乏症の基礎知識をご紹介してきました。
酸素欠乏症は、それなりに知名度が高いわりに、その危険性や対策について理解している方が少ないと言われています。酸素欠乏症は閉鎖空間などで酸素濃度が低下した場合、呼吸するだけで人間の命を危険にさらしてしまう非常に恐ろしいものです。特に、普段から空気の酸素濃度を考えて呼吸するような方や、「空気が凶器になる…」などといった想定をしている方が少ないのも酸素欠乏症の恐ろしいところだと思います。
工場や倉庫でも、空気中の酸素濃度が低下してしまう条件はたくさんありますので、まずは従業員に対する安全衛生教育をしっかりと行うようにしましょう。
三和建設では、従業員の安全を守るための工場・倉庫設計や改修について、ご相談をお受けしております。
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