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危険物倉庫における空調設備について。改修工事で空調を設置する場合の留意点

危険物倉庫における空調設備について。改修工事で空調を設置する場合の留意点

投稿日:2022.06.18 
更新日:2024.03.21 
お役立ち情報

今回は、危険物倉庫への空調の設置について、改修工事によって空調を設置する場合に注意しておくべきポイントをご紹介していきます。

『危険物』と聞くと、毒物や劇物などをイメージする方が多いのですが、ここでいう危険物は、消防法で定められている危険物のことを指しており、主に以下のような性質を持った物品が危険物に指定されます。

  • 火災発生の危険性が大きいもの
  • 火災拡大の危険性が大きいもの
  • 消火の困難性が高いもの

参照:総務省消防庁「危険物とは」より

そして、危険物倉庫とは、上記のような物品を保管する施設のことを指しているのですが、火災や爆発、有毒ガスの排出など、災害につながる危険性があることから、構造や設備に関してさまざまな基準が設けられています。特に、危険物の中には温度管理を行う必要があるものが多々ありますので、倉庫内の温度を一定に保つための空調設備は欠かせません。
この記事では、危険物倉庫の改修工事により空調を設置する際の注意点をご紹介します。

改修工事で空調を設置する時の留意点

それでは、危険物倉庫において、改修工事で空調を設置する場合の注意点についていくつかご紹介していきましょう。冒頭でご紹介したように、危険物倉庫は、火災や爆発、有毒ガスの排出など、大規模な災害につながる危険性がある物品を保管する施設になるので、建物の構造や設備について非常に細かい基準が設けられています。

ここでは、特に改修工事において注意しておきたいポイントをご紹介していきます。

①保有空地について

一つ目のポイントは、保有空地についてです。「保有空地とは?」と言う方がいれば、以前このサイト内の「『保有空地』と『保安距離』とは?危険物取り扱いの基礎知識」で詳しく解説していますので、まずは保有空地が何なのかを確認しておきましょう。このページ内でも解説していますが、保有空地は、「万一火災が発生した場合でも、周辺の建物や木々などに火が燃え移らないよう確保しておかなければならない空地」のことを指しています。また、消防隊などが、万一の際もスムーズに消火活動ができるようするための空地も保有空地と呼ばれるのですが、危険物倉庫は、万一のことを想定して、このような空間を確保しなければならないと法律で定められています。

そして、施設の改修工事によって空調を設置する時には、この保有空地が思わぬ落とし穴になってしまう可能性があるわけです。と言うのも、この保有空地の確保については、測定方法などが決められており、外部に室外機を設置する場合、保有空地の始点が室外機になってしまいます。つまり、現状、法令通りの保冷空地が確保できている場合でも、空調の室外機を設置することで、保有空地も拡大しなければならなくなるケースがあるわけです。この場合、空調の設置計画だけでなく「保有空地を拡大することができるのか?」を事前に確認しておく必要があります。

参考データ:大阪市資料

②保管物品の移動について

これは指摘するまでもないポイントかもしれませんが、意外と見落とされがちですので、ご紹介しておきます。

危険物倉庫に空調設備が設置される理由は、倉庫内が一定の温度に保たれていなければ、火災や爆発の危険があったり、品質低下を起こしたりするからです。そして、危険物倉庫の改修工事で、空調設備の交換などを行う場合、一時的ではありますが、温度管理はできなくなってしまいます。また、工事には電動工具の使用や溶接等で火気の使用も伴います。
つまり、工事期間中は、工事を行う区画内について物品の保管ができなくなりますので、別の保管場所を確保しなければいけません。保管する物品によっては、さまざまな条件を満たす代替場所を探さなければいけないので、事前に保管場所および移動方法を検討しておく必要があります。

③換気設備の運用について

危険物を保管する施設では、換気設備も必要になってきます。危険物倉庫における換気設備の必要性については、以前このサイト内の「危険物倉庫の換気設備について」と言う記事で解説していますので、危険物倉庫における換気設備の基準などについては、この記事をご参照してください。

換気と言うのは、簡単に言うと「閉空間内のよごれた空気を新鮮な空気と入れ換える」ことを指しています。危険物倉庫で言えば、倉庫内部に可燃性の蒸気が滞留することを防ぐため、換気設備を設置することで、新鮮な空気と入れ替えるようになっているわけです。
ただ、危険物倉庫は、空調により温度管理がなされています。温度管理をしながら、外気を常に取り入れるという構造になると、空調効率が著しく低下してしまうことになります。夏場など、外気温が高くなる季節であれば、冷却器などの空調機器が常に動いた状態になり、空調コストにかかる負担も非常に大きくなってしまうでしょう。

こういった危険物倉庫における問題点を解消するため、強制排出設備などについて、センサー式の設備を導入し、可燃性の蒸気を検知した時のみ運転するような機能を取り付けることなども検討すべきです。特に近年では、省エネ対策は企業の義務のような扱いになっていますので、出来る部分から省エネ対策を検討すべきでしょう。
なお、こういった対策については、消防と事前協議が必要になります。

④断熱性能について

最後は、建物の断熱性能についてです。近年では、一般の戸建て住宅でも『高気密・高断熱』が重要視されるようになっていることから、断熱性能を高めた時に、どのようなメリットが得られるのかはほとんどの方が理解していると思います。

危険物倉庫における断熱性能については、特に管理温度が低温の場合に重要になります。例えば、医薬品の保管がわかりやすいです。日本国内でも、2018年に「GDP(医薬品の適正流通基準)ガイドライン」が発出されたこともあり、温度管理下での医薬品の保管需要が増加しています。そして、医薬品の中には、新型コロナウイルスワクチンのように、超低温下での保管を求められるような製品があります。
このような超低温下での保管を求められる施設では、外壁や屋根、開口部の断熱性能が空調効率に大きな影響を与えます。そのため、低温環境を効率的に維持するため、空調のスペックを無理に高くするのではなく、外壁に新たな断熱層を設け、空調効率を高める方法などが採用されるケースがあります。なお、室内の断熱性を高めるには天井を設け、断熱することも重要なのですが、危険物倉庫では基本的に天井の設置が認められないため、消防との事前協議が必要になります。後は、製品の搬出・搬入の際の温度変化を防止するための、開口部の断熱対策なども検討しておく必要があるでしょう。

危険物倉庫の断熱に関しては、所轄の消防と事前相談を行いスペックを決定する必要があると考えておきましょう。

まとめ

今回は、危険物倉庫に置ける空調の設置について、改修工事で空調を設置する際、皆さんがおさえておくべき留意点について解説してきました。

冒頭でご紹介したように、危険物は、火災や爆発、有毒ガスの排出など、大規模な災害を引き起こす危険がある物質を指しています。そしてこれらを保管する倉庫が危険物倉庫などと呼ばれるのですが、火災や爆発などを起こさず、安全に物品の保管を実現するため、施設の構造や設備について非常に厳しい基準が設けられています。

改修工事で空調を設置する場合などでも、当然その基準が関係してきますので、この記事でご紹介した内容は是非頭に入れておきましょう。
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