フロン排出抑制法とは?概要と対象機器について解説
投稿日:2020.07.02
更新日:2023.01.24
お役立ち情報
平成31年3月の閣議決定において、フロン管理義務がさらに強化されることとなりました。皆さんも『フロン排出抑制法』という法律を耳にしたことがあるかもしれません。
このフロンは一般家庭でも使用されているエアコンや冷蔵庫などの『冷媒』としても使用されている非常に身近な物質なのですが、業務用として使用する機器に充填される場合、しっかりと管理することが義務付けられているのです。
この記事では、フロン排出抑制法について簡単にご説明し、具体的にどのような機器が法律の対象となるのか?と言う点についてご紹介していきたいと思います。
フロン排出抑制法とは
フロン排出抑制法は、平成27年4月1日に全面施行された法律で、正式名称は「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」です。
この法律は、その名称からもイメージできるように、業務用エアコンや冷蔵・冷凍庫などの機器から排出されるフロン類の漏えいを抑制するのが目的となっています。フロン類は、現在世界中で問題となっている地球温暖化への影響が非常に大きいとされているため、環境保全の観点から「フロン類が充填されている業務用機器をきちんと管理しましょう」という観点のもとこの法律がつくられました。
機器の所有者(管理者)には、“守るべき判断の基準”があり、使用している業務用冷凍空調機器すべてについて、点検整備記録簿をつけて管理しなければならないとしています。
そして、フロン類が充填されている業務用冷凍空調機器は、全て3ヵ月に1回以上の簡易点検を行うことに加えて、大型の機器は1年に1回以上、あるいは3年に1回以上の定期点検を必ず行い、年度ごとに算定漏えい量を計算しなければならないとしています。
これらのことを怠ると「フロン排出抑制法」によって罰則・罰金が科せられることになります。
また、令和元年6月5日に交付された「改正フロン排出抑制法」により管理者の義務がさらに強化されました。
参考:環境省|フロン排出抑制法
フロン排出抑制法の対象者と対象機器は?
それでは、フロン排出抑制法の対象者が誰になるのかや、どのような機器が対象となるのかについてご紹介していきましょう。
フロン排出抑制法では、業務用空調機器及び冷凍冷蔵機器などを「第一種特定製品」としており、その所有者には機器の管理者として点検などが義務付けられています。また、機器の廃棄時には第一種特定製品廃棄等実施者」としての義務が生じます。第一種特定製品については、以下のように決められています。
3 この法律において「第一種特定製品」とは、次に掲げる機器のうち、業務用の機器(一般消費者が通常生活の用に供する機器以外の機器をいう。)であって、冷媒としてフロン類が充塡されているもの(第二種特定製品を除く。)をいう。
一 エアコンディショナー
二 冷蔵機器及び冷凍機器(冷蔵又は冷凍の機能を有する自動販売機を含む。)
4 この法律において「第二種特定製品」とは、使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成 14 年法律第 87 号。以下「使用済自動車再資源化法」という。)第2条第8項に規定する特定エアコンディショナーをいう。
5 この法律において「特定製品」とは、第一種特定製品及び第二種特定製品をいう。
上記をわかりやすく言うと、家庭用エアコンや冷蔵庫、カーエアコンなどを除く、全ての業務用エアコン、冷凍冷蔵装置で冷媒としてフロン類が充填されている機器が対象ということです。
なお、カーエアコンについては、第二種特定製品として自動車リサイクル法によりフロン類が管理されるのですが、荷台に冷蔵・冷凍装置が備え付けられているような特殊車両のエアコンは第一種特定製品に分類されるので注意しましょう。家庭で使用されるエアコンや冷蔵庫は、家電リサイクル法によりフロン類の管理が行われます。
対象機器の具体例について
もう少しわかりやすくするため、フロン排出抑制法の対象となる具体的な機器をいくつかご紹介しておきましょう。
機器の名称 | 使用場面など |
---|---|
パッケージエアコン | 店舗、工場、事務所などに設置されている空調機 |
スポットエアコン | パッケージエアコンの一種です。室内機と室外機が一体型のもの |
ターボ冷凍機 | ビルの空調や工業用など、比較的大規模な空調機器。地域冷房、半導体工場などで使用されます |
チラー(チラーリングユニット) | 冷水が循環する一体型ユニット。冷水を必要なところに運んで冷却する。冷凍倉庫、工場のプロセス冷却などで使用されます |
業務用冷凍庫 | レストランやホテル、飲食店などでも使用される大型の冷蔵庫 |
冷凍冷蔵ユニット | スーパーマーケットのバックヤードなどに設置されることが多いプレハブ型の冷蔵庫 |
別置型ショーケース | スーパーやコンビニなどでよく見かける陳列ケースなど |
内蔵型ショーケース | コンデンシングユニットが内蔵されています。アイスクリームストッカーや牛乳用ショーケースなど。小型で卓上設置の物も多い |
輸送用冷凍冷蔵ユニット | 冷凍車の冷凍室の冷却装置など |
フロン排出抑制法の対象機器の具体例は上記のようなものとなります。
管理者の義務について
第一種特定製品の管理者は、当該製品の管理にあたり、以下の事項を遵守する必要があるとされています。なお、各都道府県が指導・監督を行うと決まっており、違反した場合には、罰則が適用される可能性があります。
- 適切な場所へ機器の設置等
機器の損傷等を防止するため、適切な場所に設置し、また、適正な使用環境の維持・保全を行うこと。 - 機器の点検
全ての第一種特定製品は、3カ月に1回以上の簡易点検を行う必要があります。また、室外機の定格出力が一定以上の第一種特定製品については、簡易点検に合わせて、専門知識を有する者による定期点検を行わなければならない。 - 漏えい防止措置、修理しないままフロン充填の原則禁止
機器からフロン類が漏えいしていると確認された場合、点検・漏えい箇所の特定・修理を行わずにフロンを充填してはならない。 - 機器の点検・整備に関する履歴の保存など
適切な危機管理が行えるよう、機器1台ごとに点検・修理、冷媒の充塡・回収等の履歴を記録し、機器の廃棄まで保存しなければならない。また、この記録は、機器整備の際に、整備業者の求めに応じて開示しなければならない。
第一種特定製品の管理者については、具体例も示されていますので、以下を参考にしてください。
上述のとおり、業務用のエアコンディショナー、冷凍冷蔵機器を所有する事業者は、基本的に全て、管理者となります。したがって、管理者となりうる者の具体例としては、事業所や自社ビル等を所有する全ての業種の事業者(独立行政法人等の団体・機関を含む。)、医療関係(病院、介護施設等)、学校関係、飲食業関係、農林水産業関係(食品工場漁船等)、宿泊関係(ホテル、旅館等)、運輸関係(冷蔵冷凍倉庫、鉄道、旅客機、船舶)等が対象となります。
引用:環境省資料より
まとめ
今回は、フロン排出抑制法について、具体的な対象機器や管理者が行わなければならないことについてご紹介してきました。工場や倉庫であれば、大型の空調設備を利用していると思いますし、食品を取り扱う施設になると、冷凍・冷蔵機器も多く使用していることでしょう。つまり、工場や倉庫の事業者様にとっては、フロン排出抑制法は決して無視することができない法律と言えるのです。
なお、この法律の基礎知識については、弊社が運営するオウンドメディア『Fact ism(ファクトイズム)』内でもご紹介していますので、ぜひそちらの記事もご参照ください。
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