共同物流とは?3つの区分やメリット・デメリット導入時の注意点まで紹介

共同物流とは?3つの区分やメリット・デメリット導入時の注意点まで紹介

投稿日:2023.02.24 
更新日:2023.03.07 
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物流業界では、少子高齢化などを要因として、年々人手不足が深刻化していると言われています。特に、トラックドライバーの不足は、深刻な社会問題となっており、2024年から適用される自動車運転業務の時間外労働時間の上限規制に向けては、「ドライバーが集まらないため、労働時間の削減に着手できない…」「既存のドライバーまで離職する恐れがあり、荷物を運べなくなるかも…」といった声まで聞こえてきます。
 

このような状況の中、物流業界では『共同物流』という新たな取り組みが行われるようになっています。そこで当記事では、持続可能な物流を実現するための有効な手段とみなされている『共同物流』とは何なのか、またこれを実現することのメリットとデメリットを解説します。

 

共同物流とは?

共同物流は、保管・荷役・輸送・配送などと言った物流に関わる各種機能を複数の企業が共同で行うことを指しています。物流業者は、顧客から預かった荷物は、すべて自社で配送するのが一般的です。ただ、この方法を採用する場合、わずかな荷物しかない場所へも必ず配送を行わなければいけません。そのうえ、EC市場の拡大に伴い、荷物の量は年々増加する反面、物流業界では、それを運ぶためのトラックドライバー不足が深刻化しています。そのため、従来の物流の無駄を改善するために考えられた手法が『共同物流』で、国土交通省などでも共同物流の取り組みを積極的に推奨しています。
 
参照:国土交通省「連携による持続可能な物流に向けて
 

共同物流の区分

一口に『共同物流』と言っても、物流の共同化にはいくつかの種類があります。共同物流は、主体となる企業の組み合わせによって大きく3つに区分できます。それぞれを簡単に解説します。
 

  • 同業種による共同化
    同業種による物流の共同化は、荷量の集約による量的拡大というメリットがあります。共同輸配送、共同保管、共同受発注、ユニット標準化などの連携により、規模統合による効率化を追求します。同業種であれば、比較的、共同化の条件を整えやすいことから、共同物流の主流となっています。
  • サプライチェーン全体の連携による共同化
    メーカー・卸・小売の流通三層が、在庫情報、販売情報、輸配送情報など、各種情報の共有化を行い、生産から店頭販売までのプロセスを共同で運営していくことにより、効率化を追求します。このパターンは、従来の方法や制度の大幅な変更を伴うことがあるため、実施の難易度は高いです。
  • 物流ネットワーク資産の活用による共同化
    これは、共同集荷、共配センター運営、納品代行など、業種業態に特化した高い専門能力を保有している企業が、自社の保有する資産・ノウハウを活用することで、各種物流サービスを創出し、単一企業が行うよりも安価な物流を提供することで成立します。

 

共同物流のメリット

それでは、共同物流を実現することにどのようなメリットがあるのかを解説します。
 

メリット① 配送の効率化

共同物流では、複数の物流企業の荷物をまとめて積載・輸送することになりますので、1輸送当たりの積載率が向上し、配送効率が高くなるというメリットがあります。

住宅地における宅配便の共同配送
 
引用:国土交通省「連携による持続可能な物流に向けて
 
例えば、上記のような共同物流が実現した場合、他社の荷物も同時に配送することができるようになるので、荷受けの手間を省くことができ、荷主・荷受け側双方の業務負担が軽減できます。
 

メリット② ドライバー不足や労働条件の改善

一度により多くの荷物を輸送する共同物流は、ドライバーの長時間労働の緩和や業務負担の軽減につながり、物流業界の人手不足解消にも役立ちます。
 

メリット③ コスト削減

共同物流は、トラックなどの積載率が向上します。つまり、少ないトラック・人員での配送が実現するため、必要とする燃料や人手が少なくなり、配送コストを削減できるというメリットがあります。
 

メリット④ CO2排出量の削減

共同物流は、車両などの稼働台数が削減されますので、排出されるCO2の量が少なくなり、環境に配慮した物流が実現できるというメリットがあります。
 

共同物流のデメリット

共同物流は、メリットばかりではありません。いくつかのデメリットも指摘されていますので、共同物流の導入時には注意してください。
 

デメリット① 臨機応変な対応が難しい

共同物流は、複数の企業が共同で荷物を輸送するので、急な変更や荷物の追加など、イレギュラーへの対応ができないのが弱点とされています。例えば、自社内で配送が完結している場合、トラックが出発する直前に新たな荷物を急遽積載するといった事態が起きても、柔軟に対処することができます。しかし、複数の企業が関わる共同物流の場合、一部の企業の都合で予定を変更することは難しくなります。
 
また、一度により多くの荷物を輸送する共同物流は、配達時間が読みにくくなるので、個別対応や時間指定への対応が難しくなります。
 

デメリット② 配送状況の把握が難しい

共同物流では、複数の企業の荷物を混載して輸送しています。したがって、自社の荷物が「今どこにあるのか?」「いつ到着するのか?」を正確に把握することが難しくなります。荷物の位置情報などを正確に追跡したい場合、既存システムの改修が必要であったり、別のシステムを導入し他社と共同で利用するなど、従来の「やり方」を変更する必要があります。
 

デメリット③ 配送料金の統一が難しい

現在の物流業界では、配送料金は各社が独自に設定をしています。しかし、共同物流を実施する場合、連携する企業は配送料金を調整する必要が出てきます。どの程度の料金設定が妥当なのかは、複数の企業間で調整しなければならないため、なかなか統一が難しいという問題が生じる可能性があります。
 

デメリット④ 配送資材の統一が必要

自社内で配送が完結する場合、段ボールやパレットなどの配送資材は、自社の独自基準を設け運用しています。しかし、共同物流の場合、複数の企業の荷物を混載することになりますので、効率的にスペースを活用するには、配送資材の規格を統一する必要があります。
 
各社がバラバラの規格を採用していた場合、段ボールやパレットの規格を統一するのに時間を要します。
 

まとめ

今回は、物流業界の課題を解決する一つの手段として注目されている共同物流について、その特徴とメリット・デメリットをご紹介しました。
 
物流業界では、人手不足が深刻化しており、特に配送の根幹を支えるトラックドライバーの不足に悩む企業が急増していると言われています。実際に、物流業界では、EC市場の拡大に伴い、配送需要が年々伸びているものの、それを運ぶための人員を確保できないことから、人手不足倒産が他業種の3倍にも上ると言われています。そして、2024年には、自動車運転の時間外労働時間の上限規制がいよいよ適用されることから、既存ドライバーの離職が増加し、さらにドライバー不足に拍車がかかるのでは…と言った悩ましい問題が指摘されるようになっています。
 
共同物流は、複数の企業の荷物をまとめて運ぶことから、トラックや人手の削減が期待されています。さまざまな課題を抱える物流業界では、今後さらに共同物流への注目度が高くなっていくでしょう。
 
関連記事:実際の取り組み事例から学ぶ「物流における Society 5.0」とは?

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