pageTop

倉庫新築時の将来的な温度管理対応に向けた検討項目について

倉庫新築時の将来的な温度管理対応に向けた検討項目について

投稿日:2022.06.29 
更新日:2022.07.13 
お役立ち情報

今回は、危険物倉庫における空調の設置に関する注意点第三弾として、倉庫を新設する際、将来的に温度管理が必要になった時に、スムーズに各種設備の導入が可能になるよう、事前に考えておきたいポイントをご紹介しておきます。
倉庫は、保管する物品の商品特性に合わせた環境を整備しなければいけませんし、倉庫の新築時には保管を予定している物品に合わせて、どのような設備を導入すべきなのかが慎重に検討されています。ただ、将来的に保管する商品特性が変わってしまうということも珍しいことではありませんので、倉庫建設時には将来的な可能性も踏まえてさまざまな事柄について慎重に判断しなければいけません。
そこでこの記事では、倉庫新設時に「将来的に倉庫内の温度管理が必要になる」ケースを考えた時に、事前に検討しておかなければならない、いくつかのポイントをご紹介します。

関連記事:危険物倉庫(医薬品等への対応)に空調を設置する際の事前確認ポイント
関連記事:危険物倉庫における空調設備について。改修工事で空調を設置する場合の留意点

将来的な温度管理対応への検討ポイント

それでは、倉庫新築時に、将来的な温度管理対応の可能性を踏まえて、事前に検討しておくべきポイントをご紹介していきます。冒頭でご紹介したように、倉庫は、単に広い保管スペースが確保できていれば良いというものではなく、保管する物品の商品特性に合わせて、さまざまな設備・機能を整備しておかなければいけません。

近年では、保管時に品質低下を引き起こさないよう、一定の温度帯を守らなければならない製品も多いですし、後から改修工事を実施し温度管理のための設備投資に踏み切る施設が多くなっています。そして、後付けで倉庫の温度管理対応を行う際には、新築時にそれを事前に検討したかどうかで、温度管理対応の難易度が大きく変わってしまいます。

ここでは、将来的な温度管理対応について、スムーズにその機能を実現するため、事前に検討しておくべきポイントをいくつかご紹介します。

①外壁や屋根の断熱性能を上げておく

一つ目のポイントは、屋根や外壁について、断熱性能を高めておくことです。断熱とは、文字通り「熱を断つ」と言うことを意味しているのですが、建物の断熱性能については、熱を伝わりにくくする性能のことを指しています。近年では、一般住宅でも、高断熱の家が求められており、これは断熱性が高ければ、外気温の影響を受けにくくなることから、室内の温度を一定に保ちやすくなり、空調などについて省エネが実現できるからです。
倉庫の温度管理を考えた時も、この断熱性能が非常に重要です。外壁や屋根の断熱性能が低ければ、外気温の影響を受けやすくなってしまい、空調コストが無駄にかかってしまうことになります。したがって、安定した温度管理を実現するため、最初から断熱性の高い環境を用意しておくことは、将来的に温度管理対応をする際には非常に有利になります。以下に、屋根や外

  • 外壁の断熱対策について
    危険物倉庫の外壁は耐火構造とされることが一般的で、コストも考慮したうえでALCパネルが広く採用されています。このALCパネルも一定の断熱性能がありますが、設定の温度帯によってはALCパネルだけでは満足できず、更に内側に断熱が必要となるケースがあります。ALCパネルよりも断熱性能を高める外壁材としては、耐火性能のある金属断熱サンドイッチパネルがあります。将来的な改修の可能性と費用面を鑑みての仕様選定が必要となります。
  • 【参考】外壁材の断熱性能(熱貫流率)
    ・ALCパネル(厚み100㎜):1.7W/m2・K
    ・耐火金属断熱サンドイッチパネル(厚み50㎜):0.88W/m2・K

  • 屋根の断熱対策について
    危険物倉庫は、「屋根を不燃材料で造るとともに、金属板その他の軽量な不燃材料で葺く」と言う基準が設けられています。ただ、通常の金属折半屋根を構築しただけでは、屋根部分の断熱性能を高めることはできません。外壁の断熱性能を高めても、屋根の断熱性能が低ければ新たに天井を設けるなどの工事が発生しますが、危険物倉庫内に天井を設置することは保管物によっては設置が認められないケースがあります。そこで、インシュレーション工法と呼ばれる金属折板二重葺を採用するのがオススメです。この工法は、二枚の金属板の間に断熱材を充填しますので、屋根部分の断熱性が高まります。

【参考】屋根材の断熱性能(熱貫流率)
・金属折板屋根:7.06W/m2・K
・金属折板屋根(裏打ち断熱材厚み4㎜):3.91W/m2・K
・金属二重折板屋根(グラスウール10㎏/㎥ 厚み100㎜):0.65W/m2・K

②開口部について

次は、荷物の搬入・搬出などを行う開口部についてです。倉庫は、一度搬入した物品に関して、一生そこで保管しておくことを想定しているわけではありません。一般的に、倉庫と言うものは、原料や製品等を、使用するまで一時的に保管しておくための場所となります。つまり、倉庫は、常に保管物品が出入りすることを想定しておく必要があるわけです。

それでは、将来的に温度管理対応が必要になることを想定した場合、この開口部についてはどのようなことを検討しておくべきでしょうか?細かな温度管理が必要ない倉庫であれば、荷物の搬入・搬出ができるだけ容易になることが大切です。ただ、将来的に温度管理が必要になった時には、開口部の扉が温度管理面での弱点になってしまうことから、その弱点を解消するために断熱扉に改修することが想定されます。

一般的に倉庫の搬出入口はシャッターやハンガードア等が採用されますが、シャッターの場合は改修時に断熱性能を上げる事が困難となるため、比較的改修が容易なハンガードアの採用をお勧めします。
また、頻繁に開閉が必要な場合は、庫内温度の変化を抑制するためにシートシャッターやエアカーテンの設置の検討も必要となります。

③倉庫内の区画について

将来的な温度管理対応を考えた場合、倉庫内の区画分けについても、新築時に慎重に検討しておかなければいけません。もちろん、倉庫の保管量のことだけを考えた場合、1区画で運用する方がさまざまな面で汎用性があり、効率的だと考えられます。
しかし、危険物倉庫の場合は改修工事中に同区画内での物品保管の許可が得られません。例えば、1000㎡1棟区画無しとした倉庫で将来改修工事を実施する際には、1棟分の物品を別の危険物倉庫に移動する必要があります。
また、1000㎡1棟分の保管量に対して同様の温度管理が必要となるケースも稀であることが想定されるため、改修費用を抑制する意味でも将来空調設置が想定される場合は、新築時から2~4区画程度にあらかじめ区画分けをしておくことも検討する必要があります。

④保有空地について

最後は保有空地についてです。「危険物倉庫における空調設備について。改修工事で空調を設置する場合の留意点(URL未定)」でも触れていますが、倉庫の温度管理対応を行うため、倉庫内部に空調機を設置する時には、例外なく外部に室外機と呼ばれる機械を設置する必要があり、これが保有空地の基準に大きな影響を与えます。
室外機の大きさは、空調設備のスペックによって変わるのですが、現状、外壁に接する形で設置する場合、外壁から「+1~2m」程度のスペースを占有することになってしまいます。そして、保有空地を確保する時には、この室外機が始点となって測定が行われるという点に注意しなければいけません。
例えば、倉庫の新築時に、4方向とも敷地境界線ギリギリの保有空地を確保しているというケースでは、温度管理のために空調機器の導入をしたくても、建物周りに室外機が設置できないという問題が発生してしまう可能性があるわけです。
こういったこともあり、倉庫新築時には、ある程度先のことも見越して、建設計画を検討する必要があると考えてください。

まとめ

今回は、危険物倉庫における空調の設置に関する注意点第三弾として、倉庫新築時などに考えておきたい「将来的な温度管理対応」のための事前準備についてご紹介してきました。
倉庫は、保管する物品の特性に合わせて、導入される設備が検討され、さまざまな機能性が実現されます。倉庫の新築時には、直近で保管を予定している物品の特性を念頭において、必要な機能性などが検討されます。
それでは、倉庫を新築する時点では温度管理が必要ないものの、将来的には必要になる可能性が十分にあるというケースでは、どのような点に注意すべきなのでしょうか?このような場合、この記事で紹介したように、新築時に断熱性を高めておいたり、改修工事がスムーズにできるよう区画を複数に分けておくなどの対策を検討すべきです。
もちろん、上述した対策を行う場合、予算に大きな影響を与えることになりますので、慎重な判断が必要です。

TAG

もっと見る▼