RiSOKOセミナー 『倉庫が足りない!需要が増す機能型倉庫の実態と今後の供給』第三弾 【51分37秒~】
投稿日:2021.05.20
更新日:2021.06.16
お役立ち情報
今回は第二弾に続き、2020年10月13日に行ったRiSOKOセミナー『倉庫が足りない!需要が増す機能型倉庫の実態と今後の供給』について、内容を要約してご紹介したいと思います。
お時間の関係などでセミナーに参加できなかったは、ぜひご確認ください。全編で1時間半に及ぶ動画となりますので、3本の記事に分割してご紹介しています。第一弾・第二弾をまだご確認頂けていない方は、ぜひ以下の記事からご確認ください。
RiSOKOセミナー『倉庫が足りない!需要が増す機能型倉庫の実態と今後の供給』第一弾 【5分31~27分43秒】
RiSOKOセミナー 『倉庫が足りない!需要が増す機能型倉庫の実態と今後の供給』第二弾 【26分17~51分36秒】
なお、動画を見るお時間がある方は、以下の本編動画をご覧ください。
注意
以下の内容は、基本的に動画内の座談会内容をテキスト化したものとなります。皆様にわかりやすいよう、一部言い回しなどの修正は行っていますが、基本的に動画内でパネラーの方が発した言葉をそのままご紹介しています。大幅な変更を加えると、発言者の意図とズレてしまう可能性があるためです。
一部読みにくい部分もあるかと思いますが、あらかじめご了承ください。
Contents
危険物倉庫の具体的な建築スキームについて【51分37秒~56分50秒程度】
寺内:次に『建て方の2番目』ということで、具体的にどのような建築技術、もしくはノウハウで建てるのか?というところも重要だと思いますので、このあたりは三和建設さんに、実際の実例を交えながら建築ノウハウの一端をご紹介いただければと思います。
松本さんよろしくお願いします。
松本:それでは、実際に「どんな計画をしたか?」など、具体的な事例をご紹介させていただきます。
松本:具体的な事例として、先ほどご参加いただいた中国精油様の事例を使ってご説明させていただきます。
上図の右上部分にある図面が中国精油様の敷地の絵になります。そして、その図の左側の網掛けになっている部分が、新たに土地を取得された場所で、下に大きくあるのがその部分を拡大した図です。今回の事例は、ここに「危険物倉庫を建てられないか?」というご相談でした。
上図下部の図面にある、赤点線で囲んでいる場所に危険物倉庫を建てるとのことでしたが、この場所に「どういう風な建て方をするか?」ということを、かなり計画で議論をさせていただきました。
ご存じの方もいると思いますが、危険物倉庫は1,000平米という括りがあります。しかし、この場所は、実は1,000平米もない広さで、2棟を1棟にしたとしても、90坪が2棟ですので、全く1,000平米まで行かず、300坪未満です。
それではなぜ、わざわざこれを2棟に分けたかというところから説明します。1棟にしてしまうと、指定数量の倍数という決まりが危険物倉庫にありまして、その倍数を超えると、この建物の周りに保有空地といって、「隣地から離れなければいけはい」というのは決まりがありまして、実は上図の計画面積すら確保できなくなるからです。
したがって、わざわざ2棟に分けて、その保有空地を10メートルはいらない、5メートルというような範囲のところで建築させて頂いたという事例になります。
寺内:2棟に分けた方が(危険物倉庫の)面積が増えたってことですか。これなかなか思いつかないですね。
松本:建築費は、やはり2棟にした方が上がってしまうのですが、それよりも保管量を優先させたと言う感じです。
松本:それでは次に、1棟の危険物倉庫を参考に詳しく説明していきます。
上図の左上にある図面が平面図です。今回は、ラックを採用させていただきました。これは、せっかく危険物倉庫を建てるのですから、ラックを採用して保管量を上げたいという考えからです。
そして、中国精油様は、置くものがだいたい決まっていますので、それに合ったラックをレイアウトしました。
図面では、幅員が1.7mになっていますが、本来フォークリフト使うと2.5m以上は幅員を確保しないといけないのですが、「保管量を上げる」という目的を達成するため、「横に爪が出て、荷物の出し入れができる」という特殊なラックフォークを使うことにし、1.7m という幅員でフォークリフトでの荷物のやりとりができるようにしています。
しかも、扉について、この通路ごとにシャッターが付いてますが、これも「極力、建てた面積の中は、保管量を最大限上げに行く」ということを考えての対策です。普通、倉庫というと、中に入ってちょっと荷捌きのスペースがあって、そして3m程度ひいたところにラックが並んでるのですが、庇を4メートルほど出させていただいて、庇の下で荷捌きのスペースを確保しています。
寺内:なるほど。少しでも保管スペースを確保するということですね。
松本:やはり、造った建物の中は、極力保管のためのスペースにするという、危険物ならではなのではないかと思います。
寺内:これは、ラックフォークとありますが、移動ラックは検討されなかったのですか?
松本:移動ラックは、ちょっと難しいところで。行政の消防によって、実はいろいろ判断が変わるので…。
寺内:最近は、防爆タイプの移動ラックなどもありますよね?
松本:確かにあります。しかし、今回の事例は、倉敷という地域で、コンビナートがあるところになりますので、消防の見解がかなり厳しいところがあるのです。行政によっては、移動ラックも使えるのですが、今回の水島工場のある地域では、移動ラックを採用するハードルがなかなか高かったということです。
松本:なるほど。荒木さん、消防の見解というものは、エリアによってかなり異なるものなのですか?
荒木:本来は一緒じゃなければいけないですけどね。
でも、微妙な見解があるのだと思います。「どこの地域」とは言えませんが、確かに我々の持っている倉庫でも違います。
温度管理倉庫の具体的な建築スキームについて【56分54秒~60分15秒程度】
松本:次は、温度管理倉庫の事例をご紹介させていただきます。
これは、漢方などの卸を生業とされている会社様の事例です。自社で製造などもされているのですが、そこの温度管理倉庫で行った『GMP対応』です。具体的には、原料と製品を保管する倉庫で、弊社の方で提案させて頂いた事例です
上図の左側が原設計で、もともと設計事務所さんが計画されていたところに対して、弊社の方で原設計のお見積りにプラスして、いかにコストを抑えた提案ができるかというところで『VE・CD(バリューエンジニアリング・コストダウン)』と言いますが、右側のようなご提案のお見積りを提出させていただいた事例です。
松野の説明であったように、弊社は、食品工場の建築をかなり行っていますので、温度管理の建物を得意とさせていただいております。
上図の左側の原設計は、「外壁と屋根で一体的に一番外側で断熱する…」という外断熱というような案になります。これはこれで、理に適った考え方でもあるのですが、弊社の方(上図、右側の図面)は、内側に断熱パネルと言われる、特殊な機密性の高い建材を使うことで、「温度コントロールするきせきを減らしにいく」ということをさせていただきました。
寺内:きせき?
松本:要は容積です。空気の量ですね。
上図下部に、断面を紹介しています。この倉庫は、低温管理が目的で、13℃とか10℃などと言う温度で管理をする空間になるのですが、外断熱いくと、空間としてはボードを張ったり、天井も作ってるのですが、やはりここは温度の断熱層がないので、建物全体で温度管理をしなければならないとなると、結構大きな倉庫になりますので、容積でいうと3.8万㎥になります。
寺内:3.8万㎥すべてを冷やさなければならないということですね?
松本:そうですね。さらに、荷物のないところも冷やしに行かなければならないと…。
弊社の場合(上図の右側)は、断熱パネルで内側に機密性の高いもう一個の部屋を作るような形になります。そうすることで、半分とまではいきませんが、『3分の2ぐらいの2.5万㎥』という容積の温度管理で済みます。そうすることで、ランニングコストも低減できるし、イニシャルコスト自体も、弊社の試算で7000万円ほど低減ができたというような、ちょっと特殊な事例です。
寺内:これやはり、温度管理倉庫をたくさん建てた経験のある会社じゃないと、なかなかこういった提案を考えるのは難しいかもしれないですね。
松本:そうですね。
さらに、冷蔵・冷凍などになると、一般的には、倉庫の場合、断熱とか冷却設備といわれるところは、ゼネコン側と発注が別になるケースが多いです。しかし、弊社の場合は、冷凍・冷蔵倉庫の前に、食品工場から入ってますので。食品工場の場合は、そこも一体というような発注の方が多いです。
そういったところで、特殊な技術というか、設計ノウハウを蓄積したというようなところがあるのかなと思います。
『危険物+温度管理』倉庫の具体的な建築スキームについて【60分16秒~62分34秒程度】
松本:次は、最近増えてきている「危険物かつ、温度管理をする」というタイプの事例です。
上図は、今年の1月に竣工した事例で、図面の右側は一般倉庫で、一部2階に定温があります。そして、2階建ての一般倉庫の手前に、いわゆる1,000平米のフルの面積の危険物倉庫を2棟建てましたという事例です。
松本:なお、2棟のうち1棟は『常温』です。そして、もう1棟は上図のように、半分は常温で、右側の半分は温度管理をしています。
現在、全ての保管品は四類なのですが、一部は将来的に五類にも対応できるような倉庫にしておこうということになっています。これは、物流関係の企業様になるので、付加価値をだした倉庫を持っておくことで、いろんな需要を取りに行こう…というお考えかなと思います。
寺内:こういう『危険物+温度管理』をする、まぁ掛け算の高機能化といいますか、そういった高機能な倉庫建設のご経験も結構実績があるということですね。
松本:そうですね。
この事例で悩ましかった部分は…、普通は室温が5℃で、外が外気…となると、夏場や梅雨時期は結露の心配が生じます。そして、結露を防ごうと思えば、前室を作ったりというような対策が多く、一般的な倉庫では前室作って対策を行います。
しかし、今回の事例の場合は、保管するものが危険物に限られますので、お客様のご希望で前室なしで、ある程度の結露は我慢する…というか、「受け入れる」というようなことを言って頂いたので、前室は作らずに倉庫を造らせていただいたという事例になります。
寺内:今のお話を伺いしますと、やはり数多くを建てられてる方が持っておられるノウハウというのものがあるのかなっていうのが1点。それから、ランニングコストですね。
初期費用というのも重要だとは思いますが、十年、二十年、三十年と使っていく倉庫なので「ランニングコストまで含めてどう建てるのか?」というところにも、ノウハウが必要なのかなというふうな気がします。
【まとめ】今後の倉庫の需要について【62分35秒~77分45秒程度】
寺内:ここからは、まとめに入っていきたいと思います。
今回ご参加いただいている方から事前に質問事項などをお聞きしているのですが、その中でも、高機能倉庫も含めて「倉庫の需要は、今後どうなっていくんでしょうか?」ということや、「そもそも、なぜ倉庫不足が起こっているのですか?」というような質問を結構受け付けています。
そこで、はじめの話に戻るようでちょっと恐縮なのですが、この辺りは、久保田さんはどういうふうに見られているでしょうか?
久保田:倉庫は、どんどん大規模化が進んでいるわけです。
それで、一般的に、いろいろな統計で空室率のデータなどが出てますが、統計上は基本的には大規模な倉庫しか見てないと言って良いと思います。
そして、その大規模な倉庫に関しては、相当部分埋まってきている。ここ数年で、むしろどんどん足りなくなっている…ということなのですが…。
この背景にあるのは、要は、従来は小さな倉庫で分散していたのが、大きな倉庫に一つにまとまったと。そういう大きな倉庫は、今言ったような大規模な倉庫しかない…と言ったところで、需要に対して供給が足りていないという状況になっているわけです。
こういった状況の背景は、いろいろあると思うのですが、一つは「企業そのものが物理拠点を集約化している」ということです。
例えば、昔であれば、メーカーさんが工場の前に倉庫を持っていて、そこから九州であれば、九州のセンターを持っていくのが普通でした。熊本とか長崎であればそれぞれでセンターを持っていたのですが、現在ではそれを一か所にまとめるみたいな形に集約し、どんどん大規模化しています。
さらに言えば、企業そのものも、結構淘汰されていて、日用品とか食品の卸が典型なんですけど。かつては卸関連の企業であれば、一億円ぐらいの規模の会社が多かったのですが、今は1兆円クラスのところが多くなっており、食品関係になると大体そうなっています。
こういう状況もあり、企業自体がどんどん大規模化する中で、拠点自体も大規模化していくというのがここまであったのかなと思います。
ただ、この流れは「ある程度行きついたのかな?」というのが、私個人的な見方です。
寺内:なるほど。そうなると、今後はマルチテナント倉庫を建てても埋まらない…ケースも出てくるとお考えですか?
久保田:そういう感じがすると思います。
寺内:今までもそういった事を言われながら、結果的には埋まっていっている感じなので、「どこが天井なのか?」というのが、なかなか難しいところだと思うのですが、荒木さんどう思いますか?
荒木:私は少し意見が違うのですが。
今の話題には出ていませんが、ロボディスクス化とかロボット化とか、そして密をなくす、労働力不足の解消などで非常にロボット化を進めようとしてます。
そうなった時に、今の倉庫のままだと、ローラーがたくさん引かれていて、これを改善できないのです。だから、小さなリニューアルができない…。だから、そういったリニューアルをするのではなく、大規模なものを建てて、そこに殻ごと移動するという形は当分続くと思っています。
我々の業界の中で、一番進んでいる倉庫を例に挙げても、そこでもロボット化を進めたのは2号倉庫ぐらいまでしかいってなくて、まだ10%ぐらいなので、今後まだ残り90%ある。また、他の業者さんも入れると、もっとそういうのは進んでいくと思います。さらに、空いた倉庫にそういうロボット化ができるように、また変えていく。
このあたりのの新陳代謝は、またまた当分続くのと、コロナ禍の問題などでGDPとかもありますし、温度管理がきちっとできる倉庫を作っていくとなると、既存の倉庫のリニューアルでは難しいから続くんじゃないかなと思いますけどね。
寺内:新しい倉庫に移ると言うのであれば、前の倉庫は必ず空いていきますよね。なので、移るための1個は必要ですが、玉突き的に動いていけば、倉庫面積そのものがそんなに急拡大する必要はないのかな…というふうにも聞こえるのですが?
荒木:新しい倉庫を建てる場所は、もうほとんどなくなってくると思うので、空いた倉庫をまた建て直すという感じで、だんだんと変わっていくのではないですかね。
寺内:後は、全体の需要で考えますと、「ECの拡大というものが無視できないんじゃないか?」という声が多いのですが、久保田さんこのあたりはいかがでしょうか?
ECの拡大によって倉庫の需要がすごく増えてきていると…。
久保田:それは間違いなくあると思います。
特に、今回のコロナで、その傾向は強まるということだと思います。現在は、「中抜き」みたいな形でやることがなかなか難しくなってきているのですが、今メーカー直販のECサイトなどが登場しており、食品メーカーさんにしても日用品メーカーさんにしても売り上げのかなりの割合を占めるようになっています。
それでは、それらの物流を担うのはどこかというと、巨大の物流センター、ECの物流センターを自動化しながら作っていくと。これは、需要としては間違いなくあると思います。
ただ、ECの需要自体が、物流センター全体の中に占める割合がどのくらいかというと、「意外にあまり多くない…」というのが実態かなという風に思います。
寺内:私もそのように思っていたのですが、よくよく考えてみると、同じ在庫を置くのでも、パレットで置くのとカートンで置くのとバラで置くのでは、必要な面積が全然変わってくると。
ECが増えてくると在庫量は変わらなくても置き方が『バラ』中心になってくるので、同じ在庫量でも5倍・10倍ぐらいの面積が平気で必要になってくる。特に、ロングテールということで、いろんなセンターでいろいろな種類の同じ在庫をいっぱい持ってるわけなんですね。
そういう影響も結構も、この需給に影響しているのかな、というふうには感じたりします。
寺内:次に、全般の需給の次に、こういう高機能型ですね。背景には、コンプライアンスであるとか、先ほどの『GDP』なんかのこともあるかと思うんですが。
荒木さん、このあたりの高機能の倉庫について、これに対する将来像と言いますか、今後の動きというのはどういうふうにご覧になられてますでしょうか?
荒木:先ほども出てましたけど、「工場の中にある程度造らなければいけない」というのは、事実そうだと思います。
そこがバッファとなるんですが、集約されたとはいえ、全国に4拠点は必要なのですね。
寺内:全国をカバーするうえで?
荒木:そうです。
そうすると、工場以外の所の倉庫というのは、どうしても借りなければいけないのですね。
したがって、結局「全部を全部自分では造れない…」となりますので、こういった需要というのは、どうしても増えていくと思います。
ただし、どの商品がいつまで続くかはわからないというのはあると思います。
寺内:先ほどの私の資料でもありましたけれど、いろいろなニーズと言いますか…。経営戦略も各社違えば、財務戦略も各社違ってですね、「コンプライアンスをどこまで守るか?」ということも、各社で考え方に若干の温度差があるという中で、荷主さんによる多様化というのですかね、ニーズの多様化というのは今後も進んできて、それが「汎用倉庫で掬いきれない…」ということは、今後も高機能型倉庫が拡大していきそうな気がします。
松本さん、そのあたりはいかが見られていますでしょうか?
松本:マルチテナントがどんどん建っていますけれど、やはりそこの中では収まりきれない…。
弊社の場合は、大きな企業さんというよりは、中小のお客様が多くてですね。そうなると、マルチテナントにまでは入れない…とか、そこをからあぶれた…あぶれたというと言い方は少し違うかもしれませんが…。そういった方のニーズで、やはり古い倉庫で困られている方は、いっぱいいらっしゃいます。
今回のマルカミさんの例などは、タイミングが非常に良かったものなのですが、弊社は建設をやってるからこそ、いろいろな倉庫を持ってるお客様とのつながりがありますので、そういったマッチングができれば、もっと付加価値をだしていけるのかな、お客さんのニーズにさらに応えていけるかなと思います。
寺内:最後に、お二方にそれぞれお伺いしたいと思います。
久保田さん、こういう荷主さんなり、物流会社さんが倉庫を建てられる時に、どういう事に注意と言いますか、どういうことが必要になってくると思われますでしょうか?
久保田:荷主さんが物流センターを造って失敗するケースっていうのは、逆にすごくいっぱいあります。
ただ、日本は、失敗事例がなかなか共有されないので、盲点が出てこない。例えば、建てたはいいんだけど、いろいろなトラブルがあって、最初2、3週間は止まってしまった…なんて事例も、本当にたくさん存在しています。
こういった事が起こる理由は、荷主さん(ユーザー)サイドとベンダーサイドとの情報の差みたいなところがあってですね、要は本当にノウハウがあるベンダー(建設会社やコンサル会社)というのが、どういった所かということを荷主さんサイドがご存知ないということが背景にあるのかなと思います。
寺内:情報の取り方ということですか?
久保田:そうですね。
昔は、荷主さんが自分で倉庫を持ってたり、あるいは自分で運んでる会社も結構あったわけなので、物流に関するノウハウとか管理する人材がいました。しかし現在は、倉庫をどんどん持たなくなってきて、輸送は基本的にどこもやってない…という状況になってしまい、そもそも物流に人がいない、1人2人で管理してるみたいな…。大企業であっても2、3人とかで管理しているような会社が一般的になっています。そうなると、なかなかそういう情報も入ってこないということになっているのだと思います。
したがって、ご提案ではないのですが、荷主さんは、なかなか横のつながりなんてないと思いますので、いろいろ業界団体とか、こういったセミナーの場とか。そういうところに、ぜひ積極的に出てきていただいて、いろんなネガティブ情報みたいなものも含めて、日頃から情報交換をしていただくというのが、ものすごく重要なのかなというふうに思っております。
寺内:荒木さん、いかがでしょうか?
荒木:コンプライアンスとか品質管理は下がることないと思うのです。
我々が入った時には全然なかったISOが出てきて、海外ではハラルも出てきて、今度は『GDP』ですね。どんどん厳しくなっていくのですから、機能倉庫は絶対必要になってくると思います。
今、チャットで頂いた質問についてですが…。災害時の対応で「停電はどうしますか?」というものです。
2年前にあった、大阪の台風では、西宮市にある弊社の薬品を保管する温度管理倉庫で停電が発生しました。20~30時間程度、完全に停電してしまったのですが、『5度管理』をしなければいけない倉庫ですので、大変なことになりました。夜中に5階に置いてあったものを階段で全部降ろして、チルドコンテナを借りてきて、そこに入れて走らせてとか…で何とかしのいだのですが…。
したがって、そういうことを含めて、単に機能倉庫が必要云々ではなくて、本当にちゃんと継続できるようなものにするためには「どうするんだ?」ということは、きちんと『BCP』も考えながらというのをやらなければいけないなと思います。
そういうのも含めて、いろいろ行政の方々ともお話しをしながら、とはいえ、それが本当に止まってしまったら、食品にしろ薬品にしろ使えなくなってしまいますので。
寺内:『BCP』こそ、各社の経営戦略そのものですよね。
やればやるだけお金もかかりますし、「どこまでやるのか?」「どこで線を引くのか?」ということは、結構難しいところですよね。
荒木:そうですね。
普段は費用をかけているのが無駄みたいに思えてしまいますので。この機能型倉庫は、全部そうで、質問でもありますが「光熱費どのぐらいですか?」とか…本当に費用がかかるもんなのです。
そこに我々のような荷物を預ける『荷主』が、ちゃんと理解してお金を払うような商品の金額の出し方というところまでちゃんと考えないと、今後はなかなか難しいと思いました。
「製品を作ったから、出して受けてもらえば良い」というものではないな…ということを、今日の話を聞いて感じています。
寺内:はい、ありがとうございます。
荷主さんで、1人が一つの会社の中でいくつも倉庫を建てる経験などというのはなかなかないと思いますので、久保田さんがおっしゃったように、いろいろな情報源を含めてネットワークやこういったWebセミナーから情報収集していただくというのは重要なことなのかなと思います。
それからもう一つは、会社によって経営戦略とか、外部環境に対応する方法は変わってくると思いますので。
荒木:久保田さんのお話でもあったのですが、われわれはアウトソーシングをしてしまって、物流会社さんにそのまんま委託すれば「やってくれる」という甘えがあったような気がしますね。
マルカミさんのお話を聞いても、それをまた「なんとかこなしていただいてる」ということになるのですが、もうちょっと荷主の方が理解をしながら、きちっとしてかなければいけないなというふうに感じましたね。
寺内:荷主さんも、ちょっと勉強しなさい…ということですね。
質疑応答【77分46秒~】
寺内:最後に、いくつか質問も来ておりますので、そのあたりについてのご回答、討議ができればなと思います。
Q1:建築の計画から倉庫稼働まで、どれくらいの期間が必要ですか?
松本:規模とかいろいろあると思うのですが、今日危険物倉庫とかの話をしてたので、危険物倉庫に関する弊社の実績をご紹介しますと、だいたい設計6ヶ月、工事6ヶ月とか、約1年ぐらいかなと思います。
昔よりも、申請書などが丁寧になっているところがあり、時間がかかるというのもあります。また、最近ではだいぶ落ち着いてきましたが、鉄骨などの納期が以前よりもかかる…点も注意が必要です。
基本的に、危険物倉庫で『設計6ヶ月+工事6ヶ月』で1年ぐらいを想定しておけば良いかと思います。中には、開発申請などで時間がかかってしまう場合もありますので、そういった場合は、ちょっとプラスアルファーという感じになります。
機能型倉庫を建てる際の費用はどのぐらい?
松本:危険物倉庫、フル1000平米(300坪)の平屋建て、消火設備なども付いてというパターンの参考でご紹介します。
当然、杭であったり、外構面積が広かったりなど、条件によっても変わってくるのですが、建物だけで考えると、消火設備を含んで『60~80万円/坪』程度となります。規模が小さくなると、ちょっと割高になっていくっていうような傾向があります。
温度管理するような冷凍倉庫についてですが、同じく300坪の平屋建てで、+20万円ぐらいになると思います。また、断熱をやって、冷却設備も入れてなどとなると、坪80万円から100万円ぐらいを想定していただければと思います。
次に、今日の座談会でも何回か出てきたマルチテナント倉庫などと呼ばれる大型の物流倉庫などは、デベロッパーさんから頂くオーダーは『40万円/坪』を切ってほしいと言われます。これは、常温の倉庫で、複層階でというオーダーになっています。
寺内:こういう倉庫について、最近は現状復旧してくれるのだったら「温度管理機能をつけてもいいよ」と、こんな条件で貸してくれるようなケースもあるみたいなのですが、建てるのとどちらが安いのでしょうか?
松本:そうですね…賃料+自分たちにイニシャルコストもかかって、ランニングコストなどもかかってくるので…。
既存の場合は、、土地を探さなくていいっていうのが、倉庫を造る側の人のメリットかなと思います。実際に、そういったご相談も弊社の方にも何件か来ています。
寺内:あと建てるのではなくて、リニューアルの需要も結構あるのでは?ゼロから建てるのではなくて、既存倉庫の機能強化という話もあると思うのですが、これも一つの有力な選択肢と考えてよろしいですか?
松本:建物の築年数とかにもよります。基本的に倉庫は、古い建物でも構造的にはきちんと作られていることが多いので、階高とか、そういうところに問題なければリニューアルでまだまだ使えるような建物もあるのかなと思います。
ただし、冷凍倉庫などは、止められないというのがちょっと難しいところかなと思います。
寺内:止められないということは、いったんどこかに逃げないと、リニューアルができないので、その移動費なども含めると、結構なコストになってしまうということですね?
松本:そうです。
関東で危険物倉庫を建設するとしたらエリア的にどこがいい?
荒木:埼玉が多いですよね。
寺内:私が聞いたところでは、たまたま倉庫会社さんが前から持ってた土地に建てられる余地があるという意味で、埼玉もそうですが、千葉とかの一部でもまだ建てる敷地が残っているという話を聞きます。
ただし、ゼロから、今から取得して合うのかどうか?というのはちょっとわからないですよね。
荒木:不思議なことに、千葉は運送事情があんまりよくないんですよね。ですから、どうしても埼玉の方になってしまう。
寺内:久保田さん、立地に関してはいかがでしょうかね?
久保田:単体の危険物倉庫だけであれば、もう少し幅広く、いろいろなところが見られるのかもしれないんですが、要は土地がないということに結構なっていて。
埼玉は、県もさいたま市の方も、物流拠点の誘致を結構やっているのですが、有利な制度もあることから、相当埋まってきているのかなという印象があります。埼玉でもかなり、タイトになってきているので、さらに外の北関東とかってことになると思います。
以上で『倉庫が足りない需要が増す機能型倉庫の実態と今後の供給』を終わります。
[tensen]
今回は、動画の51分以降の部分をテキスト化しています。これ以前の内容は、分割して別の記事でご紹介していますので、そちらでご覧ください。
RiSOKOセミナー『倉庫が足りない!需要が増す機能型倉庫の実態と今後の供給』第一弾 【5分31~27分43秒】
RiSOKOセミナー 『倉庫が足りない!需要が増す機能型倉庫の実態と今後の供給』第二弾 【26分17~51分36秒】
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