実際の取り組み事例から学ぶ「物流における Society 5.0」とは?
投稿日:2022.10.08
更新日:2022.12.26
お役立ち情報
皆さんは『Society 5.0(ソサエティ5.0)』という言葉を聞いたことがあるでしょうか?SDGsと並んで大手メディアなどでも耳にするようになってきた言葉で、その定義は「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」とされています。(内閣府『第5期科学技術基本計画』より)これは、現在の『Society 4.0(ソサエティ4.0)』が抱えるさまざまな課題に対して、IoT、AIといった最新テクノロジーを活用して克服し、日本が目指すべき未来社会の姿として提唱されたものです。
ちなみに内閣府の特設サイトでは、「Society 5.0で実現する社会」として以下のように紹介されています。
これまでの情報社会(Society 4.0)では知識や情報が共有されず、分野横断的な連携が不十分であるという問題がありました。あふれる情報から必要な情報を見つけて分析する作業が負担であったり、年齢や障害などによる労働や行動範囲に制約がありました。また、少子高齢化や地方の過疎化などの課題に対して様々な制約があり、十分に対応することが困難でした。
Society 5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服します。また、人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されます。社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重しあえる社会、一人一人が快適で活躍できる社会となります。
引用:内閣府サイトより
内閣府のページでも、多くの方に向けて分かりやすく説明しようとしているのですが、1回読んだだけではなかなか理解しにくくイメージできない…という声も多いです。そこでこの記事では、「物流における Society 5.0」に注目して、実際に取り組まれている事例から『Society 5.0』がどのようなものなのかを簡単に解説します。
Contents
「物流における Society 5.0」とは?
2018年、一般社団法人日本経済団体連合会から発表された「Society 5.0時代の物流-先端技術による変革とさらなる国際化への挑戦-」という提言の中では、物流は「経済の血流」として経済成長の実現に欠かせない要素であるだけでなく、企業の事業活動や人々の日常生活を支える社会インフラとして非常に重要な役割を果たすものであり、より一層の多様化・高度化が求められるとされています。こういった事から、2030年に向けた具体的な目標が掲げられています。
この提言の中では、IoTやAI、ロボットなどの最新テクノロジーの活用による物流の変革やメリットが以下の5つであるとされています。
- つながる物流
RFIDなどのIoT技術の実装により、物流をリアルタイムで追跡・管理するなどの可視化が可能になる。また、物流に携わるあらゆる関係者が、ネットワークで「つながる」ことにより、必要な全ての手続きをデジタル化することができる。さらに、調達・生産・輸送・販売などのリアルタイム情報を共有するとともに、AIなどを用いて需給予測などを行えば、サプライチェーン全体の調整・最適化が図れる。 - 共同する物流
情報を連携することによって、企業間はもとより業種横断的な「共同」の取り組みが進み、物流リソースの最適利用が実現できる。例えば、RFIDなどのIoT技術による徹底管理が実現すれば、パレット・コンテナ・通い箱などの輸送機材の「共同」使用が可能になり輸送効率の向上が実現する。 - 人手を解放する物流
自動走行車・自動運航船・ドローンなどを活用し、輸送の省人化・省力化を図る。また、ロボット、RFID、画像認識技術などにより、荷役、検品、ピッキングといった人手を介さなければならない作業の効率化も実現できる。 - 創造する物流
データを収集し、それを利活用することで、物流が新たな価値を「創造する」ことが可能になる。例えば、得られた物流ビッグデータをAIなどで分析することにより、顧客の潜在ニーズを発掘し、生産・販売との連携を深めることで、新たなサービスを提供するなど、新しい価値の創出を図れる。 - 社会に貢献する物流
最先端技術を物流に活用することで、地球環境問題や大規模災害リスクなどの社会課題解決にも「貢献する」ことができる。例えば、次世代自動車(EV・FCVなど)やLNG燃料船による環境負荷低減や、IoT・ドローンの活用によるいち早い災害状況の把握・周知などにつながる。
上記のような事を実現することで、2030年の物流と物流業界は以下のようになっていると予想がたてられています。
- 労働環境の改善を通じた魅力ある産業への転換
- 物流業の大規模装置産業への変貌
- シームレスなグローバルサプライチェーンの構築
それでは、このような提言がある中で、実際の物流業界ではどのような取り組みが始まっているのかも見ていきましょう。
参考:「Society 5.0時代の物流-先端技術による変革とさらなる国際化への挑戦-」より
「物流における Society 5.0」に向けた取り組みとは
それでは、Society 5.0時代の物流へ向けた実際の取り組み事例などをいくつかご紹介しておきます。
豊田通商「トラックの隊列走行の社会実装に向けた実証」
2016年9月から、高速道路における「後続車無人隊列走行技術」の実現に関する研究開発が進んでいます。2021年2月には、新東名高速道路の遠州森町PA(パーキングエリア)~浜松SA(サービスエリア)の約15kmで、後続車の運転席を無人化した状態でのトラックの後続車無人隊列走行試験が実施されました。
ヤマト運輸株式会社「宅配便ロッカーPUDOステーション」
再配達の防止目的などで、駅やスーパー、コンビニなどに共用型宅配便ロッカーの設置が進んでいます。ヤマト運輸が手がける宅配便ロッカーは、24時間、利用者が好きなタイミングで「受け取り」と「発送」ができるようになっています。配達員に会うこともなく、荷物の受け取りなどが完結することから、新型コロナウイルスのような感染症対策にも有効とされ、昨年より一気に利用意欲が高まっていると言われています。
なお、類似サービスとして「Amazon Hub」などもあります。
まとめ
今回は、最近よく耳にするようになってきた『Society 5.0』について、物流業界にどのような変化をもたらせるのかを簡単にご紹介してきました。内閣府のサイトなどでは、さまざまな業界における『Society 5.0』が紹介されていますので、ぜひ以下のページもご確認ください。
<参考資料など>
> 内閣府「Society 5.0」
> 一般社団法人日本経済団体連合会「物流におけるSociety 5.0 実現に向けて」
> 一般社団法人日本経済団体連合会「Society 5.0時代の物流-先端技術による変革とさらなる国際化への挑戦-」
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